家族や自分の認知症症状に気付くために知っておきたいこと

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今回は、家族・自分の認知症状にどうやって早く気づくか、です。

 

前回、「認知症によるモノ忘れ(記憶障害)は、“体験したこと自体の記憶が抜ける”」ということをお伝えいたしました。

今回は、「どうやって自分で(または家族が)認識すればいいのか。」です。

 

結論から申し上げれば「人の言葉に耳を貸す。耳を貸せるうちに…」ということが最も身近な方法です。(「耳を貸せるうちに…」というのが、やや乱暴な表現かもしれませんが、その意図は後程。)

■周囲からこんな言葉がよくでてきたら注意

日頃一緒にいたり、会うことが多い人(家族や友人、ご近所さんなど)が

「この前もその話ししてたね。」とか、

「この前一緒に行ったじゃん!覚えてないの?!」とか

「この前、なんで約束すっぽかしたの?(重要な約束を忘れる)」

というようなことを言い始めたら要注意です。

 

その言葉を聞いて

「そういえば、この前も話したな。」とか

「ああ、そういえば行ったな」とか

「ああ、そういえば約束してた!」

と思い出せれば、ただのもの忘れです。

年齢によるもの忘れの場合は「ヒント(記憶の足がかり)があれば思い出せる」という特徴があります。

しかし、「なにおかしなこと言ってるんだ?!」「そんなことなかったでしょ?!」と思ったら、腹を立てる前にハッとしてください。

繰り返しになりますが、認知症の記憶障害の場合、話した体験、行った体験そのものが記憶から抜けていることが多くあります。つまり「指摘されていることに心当たりがない」ので、「何を言ってるんだ?!」となってしまうわけです。

当然、心当たりのないことを指摘されるので、人によっては、怒り出したり、興奮して否定したりするという現れ方をします。それはそうですよね!心当たりが全くないのに言いがかりをつけられたら、怒りもしますよね(笑)(この「怒り出す」については、また別の記事で書こうと思いますが、「怒りっぽくなる」というのも、心配な変化です。)

それらの指摘を「一人の人が言っているのではなく、複数の人が言っている」場合、本格的に受診などの対応を考えましょう。一人の人が指摘をしている場合は、必ずしも指摘内容が正確でない場合もあるので、自分の最近の言動におかしいところがないか(同じことを何度も言っていないか。大事な約束を忘れていないかなど)を、ほかの人にも聞いてみるのもいいでしょう。

 

■その一歩を踏み出す勇気を

恥ずかしいかもしれないし、勇気がいるかもしれません。しかし、その後のご自身の人生を、「楽しく、自分らしく生きていく」のか、「放置して、徐々に迫りくる不安にさいなまれながら生きていく」のかを考えれば、「一時の恥」を乗り越えて前者を選択することを、今のうち(障害が他人事のうち)に、自分に言い聞かせておくことは、思っている以上に大事なことなのです。認知症は早く発見できればできるほど、進行を遅らせることができます。だからこそ、この最初の障壁をどれだけ早く乗り越えるかが、一つのカギとなります。

 

というのも、症状が進行してくると、病気を自分で受け容れることが難しくなり、病院へ行くことを拒んだり、周囲の言うことに素直に耳を傾けられなったりする傾向が多々見られます。これが、本当に多い。これは現場の肌感です。

そうこうしているうちに、症状はさらに悪化し、さらに受診をかたくなに拒み、周囲の協力すら煩わしく思い、「自分でできるんだから放っておいて(実際にできていなくても)」となってしまう。

そんな負のスパイラルが日本中で起きた結果、認知症患者が460万人を超え、さらに急速な勢いで増えているわけです。

この負のスパイラルにハマらないためにも、先述の通り「認知症や記憶障害が、他人事と思えているうち、すなわち、認知症に対して冷静でいられるうちに、正しい知識を身に着け、正しく警戒すること」が必要なのです。

これが、最初に書いた「耳を貸せるうちに…」です。

 

■現場から

私が訪問しているお宅で、こんなお話がありました。

「(利用者のお子さん(中年層)が)一緒に出掛けたことを全く覚えていなかった。『一緒にあそこでご飯食べて、こんな話ししたじゃないか』って言っても思い出せなかったようだ。酒も飲んでなかったのに…。家族に『そんなことあった?』って聞いて、自分でも驚いていたようだ。」

これは心配な忘れ方の例です。結局、すぐに受診をして、原因が別の病気であることが確認でき、治療を進めて、症状が落ち着いたというケースでした。ご本人が周囲の指摘に耳を傾け、受診を決断したことが、進行を食い止めた好事例です。

また、このケースのように、認知症に限らず、ほかの病気や薬の影響で一時的に記憶障害が生じる場合もあるので、「心配なもの忘れ」=認知症とは言いきれませんが、いずれにしても、病院で検査を受ける必要があります。

 

■その他の「気付くチャンス」

また、気付くチャンスは他にもあります。

75歳以上では運転免許の更新時に認知機能の検査が加わりますし、自治体によっては、市で行う健康診断の項目に、一定の年齢以上で「認知機能検査」を加えている場合もあります。または、町内会の取り組みとして、一定の年齢以上の方が自主的に簡易検査を定期的にやっている地域もあり、予防も含めた仕組みがうまく機能しているようです。

警察庁ホームページ「講習予備検査(認知機能)について」(リンク)

※簡易検査の方法については、いくつかの代表的な方法がありますので、別のところでお話します。

 

それらの検査結果が思わしくなければ、あらためて病院へ行き、検査を受けた方がいいでしょう。

今回のお話のポイントは

・認知症が他人事のうちに、正しい対処法を知っておきましょう。

・周囲の人からの指摘が増えたら、腹を立てる前に、耳を傾けましょう。

でした。

次回は、「無視できない要素「病院へ行く恐怖心・嫌悪感」との戦い」について、お伝えしたいと思っております。

 

今回も、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

(参考文献:認知症は怖くない18のワケ/浦上克哉 著)